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Project Story

リチウムイオン電池リサイクル事業立ち上げ
環境・リサイクル事業

他社に先駆け事業化に踏み出すリチウムイオン電池(LIB)の安全な処理と効率的な金属リサイクル

リチウムイオンバッテリーリサイクル事業立ち上げ

ハイブリッド車、電気自動車、家庭用蓄電池などで使用されているリチウムイオン電池は、今後も需要の伸びが予想されており、その再資源化市場も拡大すると見込まれている。一方で、リサイクルの仕組みはまだ確立されていないのが実情である。DOWAエコシステムでは廃棄物を処理しながら資源循環を図っている。他社に先駆けて、廃棄されるリチウムイオン電池を無害化・減容化したうえで、リサイクルする仕組みを確立するため、本プロジェクトを立ち上げた。2019年1月より無害化後のリチウムイオン電池の再資源化ラインを秋田で稼働させた。

K.T
エコシステム山陽株式会社
取締役工場長
1997年入社
K.T
A.T
DOWAエコシステム株式会社
ウェステック事業部
2010年入社
A.T
C.N
DOWAエコシステム株式会社
環境技術研究所
2011年入社
C.N
01

プロジェクトでの役割を教えてください。

プロジェクトでの役割を教えてください。
K.T
環境技術研究所が、以前からリチウムイオン電池のリサイクル方法について研究していました。ある程度、実用化のメドが立ったため、2015年頃から本格的に事業化していくための取り組みを開始。当時私はDOWAエコシステムのウェステック事業部に所属しており、環境技術研究所、営業、製造などの各セクションをまとめる立場でプロジェクトに関わることになりました。
C.N
私は環境技術研究所における本プロジェクトの担当者として、リチウムイオン電池のリサイクルプロセス開発に携わりました。試験設備(熱処理試験炉)を建設し、その設備を用いて最適な熱処理条件を見いだすための試験を実施。また、熱処理した後の各有価物の分離回収プロセスを開発するとともに、そのプロセスの権利化にも取り組みました。
A.T
私が担当したのは、環境技術研究所で開発したプロセスを実機ベースにスケールアップするにあたっての機器の選定と建設です。建設実行にあたっては、設備の運用手順を定めたり、設備点検整備基準を定めたりして、現場との調整にあたりました。2019年1月からは設備の運用を開始、操業の安定化に向けた改善に取り組んでいます。不具合を抽出するとともに、プラントの改造も実行しているところです。環境技術研究所のC.Nさんとは、常に情報共有しながらプロジェクトを進めてきました。
02

担当する業務において、ポイントとなったのはどんなことでしたか。

K.T
実証試験をするためには、廃棄されるリチウムイオン電池を集める必要があります。DOWAは自動車関連のビジネスを展開していることや、廃棄物処理事業で既にさまざまな企業と取引関係にあるため、既存の窓口を介してお客様にアプローチし、廃棄されるリチウムイオン電池を集めました。そうした活動の中で、お客様にDOWAエコシステムの技術の優位性を理解していただくための努力をしたところが、一つのポイントだったと思います。
C.N
私たちが開発したプロセスでは、廃棄されるリチウムイオン電池は、いったん熱処理して無害化した上で、そこから銅やアルミニウムなどのベースメタルや、コバルト、リチウムなどを回収します。こうしたプロセスでこれらの有価金属を回収した事例がないため、大学で学んだ知見を活かし、新しく回収技術を確立しました。その後、コバルトの回収技術については、特許が認められました。新しく開発した技術をきちんと権利化していくことは、ビジネスにとって極めて重要なことです。
A.T
リチウムイオン電池を熱処理したあとで、破砕、分級(ふるい分け)、磁選(磁石で引きつける)といった工程を経て有価金属を回収しますが、ニッケルやコバルトは銅箔に付着しており、銅も回収するので、銅箔の品質を落とさないように扱う必要がありました。どのような設備を導入し、どのような条件で運用するのか、試行錯誤しながら性能要求に見合ったものを見つけ出すのは予想以上に大変でした。
担当する業務において、ポイントとなったのはどんなことでしたか。
03

プロジェクトの成果は?

プロジェクトの成果は?
K.T
DOWAエコシステムでは、もともと東日本(秋田)と西日本(岡山)に熱処理施設を持っており、この既存のインフラを活用することで、スピーディーに全国を対象とした事業を始めることができました。自社の強みを活かして同業他社に先駆けてサービスを提供できたことは、本プロジェクトの大きな成果だったと思います。
A.T
研究・現場・営業の部門連携が強化され、事業成功に向けて一丸となって取り組むことができたのは、大きな成果だったと思います。事業化をプレス発表したあと、社外から多くの問い合わせをいただき、社会に貢献する仕事であることを実感しました。個人的には、選別技術の知識・経験を得たことと、視野と人脈が社外にまで広がったことが成果です。
C.N
環境技術研究所として開発したプロセスを実際の操業にまで持ち込むことができたのは、大きな成果だったと思います。リチウムイオン電池に含まれている銅やアルミについては、リサイクル事業がスタートできました。ただ、コバルトやリチウムの回収については、まだまだ課題があり、引き続き研究開発に取り組んでいかないといけないと思っています。
04

プロジェクトを通して、ご自身が得たものは?

C.N
「何をやらないかは、何をやるかと同じくらい重要だ」という言葉を座右の銘にしています。「あったほうがよい」という程度のことは大胆に切り捨て、「絶対に必要」と思われる仕事に集中し、最短距離で目的に向かって進むことが大切だということをこのプロジェクトを通して実感しました。
A.T
実は当初、環境技術研究所のプロセスをそのまま適用すれば、回収したい有価金属が簡単に回収できると甘く考えていました。ところが、実際は破砕原料 一つとってもさまざまなものがあり、運転条件も緻密な条件設定が不可欠です。起こりうる事象を予め想定し、先回りして計画を練っておかないと、スムーズにことは運ばないのだということを学びました。
K.T
お客様によってリチウムイオン電池の廃棄に対する考え方はさまざまで、一律の対応はできません。私はキャリアの中で、お客様と濃密に関わった経験がありませんでした。本プロジェクトを通して、新しいビジネスを事業化していくためには、プロダクトアウトではなく、マーケットインの姿勢が必要であることを痛感しました。
プロジェクトを通して、ご自身が得たものは?
05

今後の展開を見据えて、取り組んでいることは?

今後の展開を見据えて、取り組んでいることは?
A.T
設備を安定稼働させ、実績を積み上げて、リチウムイオン電池のリサイクル事業を軌道に乗せていこうとしています。廃棄されるリチウムイオン電池の市場拡大が見込まれるので、今回、秋田の拠点に導入したリサイクル設備を岡山、さらにはその他の事業所にも展開していければいいなと考えています。
C.N
お客様のニーズを考えると、保管、輸送まで含めたすべての工程において、安全性や低コストをさらに追求していく必要があるでしょう。人材や仕組みのレベルアップに継続して取り組み、他社と差別化していくことが大切です。また、当社としてはお客様のリチウムイオン電池処理に対するリサイクルのニーズに応えるため、コバルトやリチウムの回収技術をもっと磨かなければなりません。より少ないエネルギーで、取りこぼしなく、高度にコバルトやリチウムを分離回収する技術の開発に引き続き取り組んでいます。
K.T
私は2020年4月から、エコシステム山陽の取締役工場長を務めており、リチウムイオン電池のリサイクルに関しては、西日本の工場拠点の責任者として、操業プロセスの最適化と、市場の拡大に備えた投資計画の策定に携わっています。DOWAエコシステムとしては、エコカーに搭載されているリチウムイオン電池だけでなく、家庭用蓄電池の廃棄需要にも対応していくことが次の課題です。またDOWAエコシステムは現在、リチウムイオン電池リサイクルの海外展開も始めています。タイでの事業展開を皮切りに、プロジェクトの成果は海外でも活かされようとしています。
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