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Project Story

導電性アトマイズ粉の製造移管への挑戦
電子材料事業

新しいニッチトップ製品を生みだそう!高圧水アトマイズ法による電動材料の開発と拡販

水アトマイズ製造移管への挑戦

2012年、導電材料の主力製品である銀粉の原材料となる銀価格が高騰、ユーザーから代替品の開発要請があった。DOWAエレクトロニクスは、従来とは異なる製法である高圧水アトマイズ法(溶かした金属を高圧水で粉砕して粉末化する方法)により、銀コート合金粉(銅合金粉の表面に銀をコートした製品)を開発、サンプル提供を開始した。だが、技術的な課題解決をする中で社会環境も変わり、同じ高圧水アトマイズ法による銅粉についても、積層セラミックコンデンサの外部電極として開発、販売を開始、量産化に成功した。

H.T
DOWAエレクトロニクス株式会社
電子材料事業部 導電材料担当部長
2013年入社
H.T
L.Y
DOWAエレクトロニクス株式会社
電子材料事業部
2015年入社
L.Y
K.M
DOWAエレクトロニクス岡山株式会社
技術開発部
2014年入社
K.M
N.M
DOWAエレクトロニクス岡山株式会社
製造第3課
1994年入社
N.M
01

プロジェクトでの役割を教えてください。

プロジェクトでの役割を教えてください。
H.T
DOWAエレクトロニクスはもともと、化学還元法(金属錯体を還元して金属粉末を析出する方法)による金属粉末である銀粉、銅粉を開発・販売してきました。これらの製品は、太陽電池やパソコン、スマートフォン、サーバー、携帯基地局などに使用されています。2012年、銀価格の高騰により、 高圧水アトマイズ法による銀コート合金粉の開発に着手することになり、プロジェクトが発足しました。私は営業として国内外のユーザーを担当、途中、1年半は米国駐在を経験、2016年からは導電材料担当部長として、国内外のユーザーへの販売を統括しています。
L.Y
私は営業として国内の数社を担当しています。開発担当のK.Mさんとともにユーザーを訪問し、ニーズをヒアリングしながらサンプルを開発・提供しています。提供したサンプルについての問い合わせに対応するとともに、先方の評価を伺い、技術的な課題を整理して次のサンプル開発に活かす、といった作業を繰り返しています。
K.M
私は2014年に入社し、機能材料研究所の水アトマイズグループに配属されました。入社以来、プロジェクトの一員として高圧水アトマイズ法による金属粉末の開発に携わっています。営業のL.Yさんと共にユーザーからニーズを伺う活動を展開する一方、銅粉の量産化にあたっては、製造部門のN.Mさんとコミュニケーションを取りながら、良質な製品を製造できる体制の構築に努めました。銀コート合金粉の開発に関しては、引き続き技術的な課題の克服に取り組んでいるところです。
N.M
私はもともと化学還元法による銅粉製造の操業管理を担当していましたが、2019年9月から、高圧水アトマイズ法による金属粉末製造の量産化を担当することになりました。量産化にあたって、開発部門から操業部門へ製造を移管することになったので、スムーズな操業を実現するため、操業管理の仕組みづくり、安全性の検討、スタッフの確保と教育等に力を尽くしています。
02

ご自身の担当のなかで、ポイントとなったのはどんなことでしたか?

H.T
プロジェクトのもともとのシナリオは、高圧水アトマイズ法による銀コート合金粉を量産化することだったのですが、技術的な課題があと一歩のところでなかなか解決できずにいました。そうこうするうちに、銀価格が落ち着き、銀粉の代替品を用意する緊急性はなくなったため、投資回収手段として、マーケットの大きい積層セラミックコンデンサの外部電極向けの銅粉開発にも舵を切る決断をし、上司に提案しました。大きな方向転換でしたが、これが成功して高圧水アトマイズ法による銅粉の量産化につながりました。
L.Y
私の担当するお客様は、昔からDOWA既存の化学還元法による銅粉製品をご愛用いただいているのですが、この製法による銅粉は製法由来の技術的な課題があり、中長期的には使用を取りやめる方向でした。このため、高圧水アトマイズ法による銅粉の製造はどうしても必要という事情もあったわけですが、この製法では当社は最後発でした。そこで市場に食い込むため、担当だけでなく顧客経営層にも商談を行う機会を設けました。入念に商談の下準備を行ったことも奏功し、受注に成功、量産化にもつなげることができたと思います。
K.M
私はもともと銀コート合金粉の開発を担当していたのですが、ユーザーからの急な注文に対応するため、銅粉も担当することになって大変でした。銅粉については量産化できることになったので、顧客の要望を満たす品質の製品を製造できるように、操業管理のN.Mさんと協力してプロジェクトを進めました。
N.M
当社は高圧水アトマイズ法による製造実績・経験がありませんでした。K.Mさんが開発したレシピを使用するのですが、設定条件によって、レシピ通り作っても、同じ品質の製品が作れるとは限りません。そこで、操業の中でレシピの設定条件を微調整していく必要があります。K.Mさんと細かく情報交換しながら、品質と量産のバランスが取れた操業方法を確立していくところがポイントでした。
ご自身の担当のなかで、ポイントとなったのはどんなことでしたか?
03

プロジェクト遂行のうえで工夫したことは?

プロジェクト遂行のうえで工夫したことは?
K.M
高圧水アトマイズ法での製品化では、後発企業となるため、銅粉については、他社製品に対していかにして優位性を示すのかというところに苦労がありました。サンプルも顧客ニーズに合わせてさまざまなカスタマイズを行っています。一方、銀コート合金粉については、技術的な課題があるため、信頼性を確保する必要があり、そこはまだ取り組み中です。
N.M
年齢や勤務体系などさまざまな立場の社員がいるなかで、安全知識、操業知識を身につけてもらう必要があります。そこで、楽しく働ける雰囲気づくりをするとともに、一人ひとりのキャリアプランや生活背景に合わせた働き方を提供することを心がけました。また、3交代勤務による24時間操業のため、夜間帯にイレギュラーな事態が発生した時の対応手順を定めるなどの工夫をしました。
L.Y
お客様が何を求めているかを丁寧に聞くことが大切で、開発のK.Mさんとともに、担当顧客の工場に足しげく通うことを意識しました。月に何回かは必ずどこかに出張に行っていました。
H.T
私の場合は営業経験が長かったため、そこで得た人脈や製品知識は、本プロジェクトでも役に立ったと思います。また、日頃から自分のビジネスに直接関係していなくても、お客様にとって役立つ情報を提供するように心がけてきました。営業活動には、このような形で築いた“人と人”の信頼関係も必要だと思います。
04

プロジェクトを通して、ご自身が得たものは?

L.Y
銀コート合金粉では、サンプル出荷で好評価を得て、実際に少量の製品を2~3か月供給するところまでは何度も行きました。これで成功したと思っていたら、「新しい課題が出た」と連絡が来る。そんなことが何度もあり、一つの製品を世の中に出す時の大変さを味わったのは、よい勉強になりました。逆に今数量が安定的に流れている製品は、昔の誰かがものすごく苦労した上で、ここまで持ってきたのだということもわかりました。
H.T
大きな投資をして、ゼロから製品を販売するという形のプロジェクトは初めての経験でした。会社からの期待を背負いながら、ゼロからイチを生み出す大変さがわかりました。
K.M
研究テーマの中で、開発した製品が量産化にまでこぎ着けるのは、必ずしも多いことではありません。それだけに、このプロジェクトで量産化を経験できたのは、キャリアの上で大きな意味があったと思います。量産化にあたっては、多くの課題をクリアする必要があることも、自分で担当してみて初めてわかりました。また、一つの製品を作り上げるために、製造、分析、資材、営業などさまざまな部門の協力を得ながら進めていくことを体感できたことも有意義なことでした。
N.M
高圧水アトマイズ法という新しい製法に挑戦できたことは、自分の大きな財産になったと思います。
プロジェクトを通して、ご自身が得たものは?
05

今後の展開を見据えて、取り組んでいることについて教えてください。

今後の展開を見据えて、取り組んでいることについて教えてください。
K.M
当初より関わってきた銀コート合金粉の技術的課題を解決し、信頼性を高めて、ユーザーに納得いただき、量産化に持っていくことが第一の目標です。中長期的には、さまざまな導電材料に関して学び、開発から製造まで幅広く対応できる技術者になりたいと考えます。
L.Y
高圧水アトマイズ法による銅粉については、営業の観点からすると、まだ風穴を開けただけで、波には乗れていません。もっとビジネスを広げていくことが目標です。銀コート合金粉については、利益を生むことができ、世の中にも貢献できる面白い製品だと思っているので、ぜひ量産化を成功させたいと思っています。
N.M
高圧水アトマイズ法による銅粉の製造については、開発から移管を受け、操業が始まっています。作業者の安全を確保することが最も大切で、あらゆる点で検討を行い、安全教育にも力を入れ、今後もゼロ災害で進めていきます。また、操業を巡っては、各部署からさまざまな要望が寄せられるので、率直に意見交換できる関係を大切にしています。製造部門としての主張はもちろんありますが、基本的には「できない理由を考えるより、できる方法を考えるほうが仕事は楽しい」と考えています。
H.T
電子材料部門全体から考えると、高圧水アトマイズ法による銅粉の収益は、まだまだ不十分で、シェアを更に拡大していかなければなりません。また、銀コート合金粉についても成果につなげたいと思っています。今後も「DOWAに頼めば期待に応えてくれる」というところを顧客に対して示し、銅粉や銀コート合金粉だけでなく、ニッチトップの製品をどんどん生み出していきたいと考えています。
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