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Project Story

TSL炉スラグロス改善プロジェクト
製錬事業

TSL炉スラグロス改善プロジェクト

TSL炉スラグロス改善プロジェクト

DOWAの製錬事業の中核となる小坂製錬は、2008年に鉱石を主原料とする自溶炉から、リサイクル原料の処理を得意とするTSL炉にプロセスを大転換した。TSL炉による新しいプロセスにおいて、いかに有価金属の回収率を高めていくかが経営課題となる中、とくに技術的に高い壁となっていたのが、ある特定有価金属が低い回収率のままスラグ(製錬に際して、溶融した金属から分離した物質)として廃棄されていることだった。この有価金属はメタル価格が比較的高いため、回収率を高めれば収益への大きな貢献が期待できる。2017年、この有価金属の回収率を高めるため、プロジェクトが立ち上がった。

H.W
DOWAメタルマイン株式会社
製錬部 小坂駐在
2003年入社
H.W
T.A
小坂製錬株式会社
製錬部 貴金属課
2013年入社
T.A
01

プロジェクトが始まったきっかけは?

スラグを溶解して、物性を評価する試験の風景
スラグを溶解して、物性を評価する試験の風景
H.W
私は2015年から製錬技術研究所に勤務していましたが、それ以前は7年間、小坂製錬の銅製錬部銅製錬課で、操業現場の技術スタッフとして勤務していました。2016年のある日、以前から課題となっていたある有価金属について、「この条件を設定すれば、回収率が高まるかもしれない」ということを現場時代の後輩から伝えられて、これは取り組む価値がありそうだ、と思ったことがプロジェクトスタートのきっかけとなりました。研究所に異動したあとも、現場時代の後輩から技術的な相談を受けるなど、密に情報交換をしていたことが、よい方向に踏み出す力となったのです。
02

プロジェクトはどのように進めたのですか。

H.W
回収率が高まる条件とは何かを見つけることがポイントです。スラグの組成、温度、雰囲気(酸素分圧)などを緻密に解析して、最適な条件は何かを見つけなければなりません。また、何%の回収率を目指すのか、その目標値を設定する必要もあります。単純に対象とする有価金属の回収率を高めると、別の有価金属の回収率が下がるといった問題もありました。他の有価金属の回収率低下を招かない条件設定でないといけません。このような条件を見いだすための予備試験を、研究所の若手で行動力抜群のT.Aさんにお願いしました。
T.A
私は新入社員研修を終えて初めて配属になったのが製錬技術研究所でした。3年ほど新規プロセス開発の研究をしていたのですが、H.Wさんの指示でその有価金属の回収率を高めるためのプロジェクトに加わることになりました。予備試験を実施し、その結果をH.Wさんに報告、次の予備試験の実施方法について議論する、という作業を2017年の春から秋にかけて繰り返していました。
プロジェクトはどのように進めたのですか。
03

予備試験の次のステップについて教えてください。

予備試験の次のステップについて教えてください。
H.W
予備試験の段階で良好な結果が得られたので、実際の操業現場で同じ結果が得られるかについて、2017年の秋口に検証することにしました。私は操業現場で働いた経験が豊富だったので、実機での検証試験は私が担当し、データの解析はT.Aさんに担当してもらいました。実機での試験は操業を続けながら行うものなので、操業に悪い影響を与えることはできません。試験と操業の線引きについて明確にし、操業現場の人たちの協力を得たうえで実機試験に臨みました。
T.A
実機試験では、サンプルの採取と分析、試験期間中の操業データの解析を担当しました。データの解析は、従来の操業によるデータと、実機試験として条件を変えた時のデータを比較し、条件を変更した結果狙い通りの効果が出ているか確認することを意識してまとめました。H.Wさんが現場との調整を担ってくださったので、私はデータの解析に集中することができました。狙い通りの成果が得られたと思います。
04

プロジェクトを通して成長につながった点は?

T.A
このプロジェクトが始まる前も研究に取り組んでいましたが、操業現場と密接に関わる機会は多くありませんでした。私としては、入社後初めて、操業現場と深く関わる仕事ができました。実験室内で行う予備試験の内容を操業に反映させていくことができたという意味で、私にとっては大きな経験だったと思います。
H.W
私の場合、研究所と操業現場のどちらも経験しているわけですが、それまで両者の間には少し距離があるという印象を受けていました。しかし、今回のプロジェクトを通して、研究所と現場が一体となって、大きな成果につなげることができた点が一番良かったと思いますし、私としても自信を得ることができました。
プロジェクトを通して成長につながった点は?
05

オフタイムはプロジェクトのことを考えましたか?

オフタイムはプロジェクトのことを考えましたか?
H.W
以前別のプロジェクトを担当していた時、オフタイムでも仕事のことを考えてしまい行き詰まった経験がありました。そこで、今回のプロジェクトでは、オフタイムにはあえて仕事のことを意識せずに過ごそうと努めました。
T.A
H.Wさんがゆとりのある計画を組んでくださったので、オフタイムに仕事を考えなければならない場面はありませんでした。気分転換という意味では、H.Wさんも私も、地域のフットサルチームに所属していて、週2回一緒に汗を流しています。プロジェクトでご一緒する前から、別の形で同じチームの一員でした。
06

今後の課題は?

T.A
個人的な話になりますが、私は2018年4月から、小坂製錬の製錬部 貴金属課に異動し、操業現場の技術スタッフとして働いています。このプロジェクトで得た乾式製錬の知識や操業改善の進め方などは、今の担当工場の課題解決にも役立つことなので、今回の経験を日々の業務に活かしているところです。
H.W
今回のプロジェクトは、大きな成果を残すことができ、社内表彰をいただきました。収益も年間数億円単位で高めることができ、インパクトを残せたと思います。ただ、リサイクル原料は必ずしも均一な性状のものが手に入るわけではないので、原料が変わると回収率や処理量に影響が出てしまいます。どのような原料でも、安定的な回収率と処理量が得られる条件の設定や操業方法を確立することが今後の課題です。
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